『映画館のまわし者』~ある映画技術者のつぶやき~、荒島晃宏(著) 近代映画社 刊

『映画館のまわし者』~ある映画技術者のつぶやき~、荒島晃宏(著) 近代映画社 刊の現物と、
1950年代、日本をテーマに製作されたアメリカ映画の16ミリ・フィルム(現物)です。

(これは、当方の古いブログに2017年4月に掲載したものを加筆修正した記事です)

荒島晃宏(著)、近代映画社
『映画館のまわし者』~ある映画技術者のつぶやき~

という本が素晴らしかったです。
映画館での一日の仕事として、
話を進められている書き方で、例えば
集客のための入場者プレゼントの話や、
上映に関する知らなかったことも多く、
とても興味深く読めました。

原題風に表現するならば、
“現場の優しいお兄さんが、判りやすく丁寧に語っている”
という感じでしょうか(笑)

表現としては面白い印象を受け、楽しく読み続けているうち、
映画フィルム(プリント)も、
元からのコピーものであることから、
アナログ・レコードと凄く似ている面が
多々あるように思いました。

数十年という時を経たアナログ・レコードも、
微妙な反りなどの変形や、
音溝が削られることによって
音も変わりますし、埃や静電気に影響を受けます。

映写の「お化け」と呼ばれるものも、
レコードには「ゴースト」という表現でありますし、
各種ピントの件は、レコードのプレスが
初版や後発版による音のピンぼけにも当てはまるでしょうか。

最低二度は観ないとわからないという、
フィルムの入った缶が入れ替わったことで起きる
「巻の入れ替わり」も、
曲順が入れ替わったミスのあるLPレコードと
同じように解釈してしまいました(笑)

著者(荒島晃宏 氏)よりも、私の方が
年下なのですが、私の扱っている映画や音楽が、
映画技術者として活躍される著者の時代よりも
ずっと昔のものなので、
時代を行き来しながら映画館を想像しておりました(笑)

芸術に対する貴重な文化遺産の影に、
先人達の苦労や知恵を思いながら鑑賞する楽しさも
教えてくれる本です。

追記:197ページ「データ蘭」は誤植、正しくは「データ欄」ですね。