最近、手許にある媒体(SP盤、レコードやソノシート、
ラッカー原盤など)を今のうちに録音しておこうと
考えることが多くなりました・・・と、いうのも、
これらが相当に経年劣化して来ていると感じるからです。
私が子供時代の昭和50年代に、
近所のレコード屋から新品で買ったレコードの袋でさえ、
弾力が無くなり、硬くなってカリカリになってますし、
色も薄く茶変色していますから、
既に経年劣化で変質しているのでしょう。
録音しようとしているレコードなど、既に60年以上、
80年以上も経っていると、
やはり素材そのものが劣化して来て、
材質変化による音溝の変化、ひび割れ、むけるような表面の剥がれ、
縮みや歪み、反り、他の要因もあり、
再生しにくくも、なって来ているものがありました。
そこを上手く、再生できるように、
手入れや工夫をしながら、
『資料録音(23)人々の夢と思いの録音』のために
録音をしましたが、
きっと、もう再生されることも無いだろうと思うと、
少し寂しい気持ちにもなりました(苦笑)
いくつか録音をピックアップすると・・・かつて、東洋一
と言われた豪華な施設「白雲楼ホテル」(昭和7年開業)の
パンフレットそのものに貼り付けられて、
配布された宣伝歌。パンフレットごとターンテーブルに乗せて
再生するのは結構大変でしたが、
昭和20年代と思われるため、それなりに劣化しています。
廃墟になっていた白雲楼ホテル自体は有名でも、
今では宣伝歌なんて、誰も知らないでしょうね。
オーディオ機器の海外輸出も好調だった日本のメーカー、
旭無線電機(昭和23年創業)のラジオとステレオ装置を
宣伝するためのデモ音源ですが・・・現在となっては
稀少な文化遺産に思います。
日本航空「Japan Air Lines」が、
フランスへの直行便を開始した時の宣伝は、
飛行機に乗ってフランスへ旅立つイメージをした作りに
なっています。数年後に始まったエフエム東京の
ラジオ番組『ジェット・ストリーム』を連想させる音源でした。
かなり凝った演出です。
この中でも、手が震える程に稀少な音源は、
1940年3月X日に放送されたアメリカのラジオ番組の
音楽部分を録音した原盤でした。
当時は生放送ですから、もともと録音は無いんです。
これは、おそらく、この世に現存する唯一の原盤録音でしょう。
© 2024 磯崎英隆 (Hidetaka Isozaki)